【ソウル=恩地洋介】韓国大統領府は22日、国家安全保障会議(NSC)の常任委員会を開き、日韓で防衛秘密を共有する日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決めた。輸出管理を厳しくした日本への反発から韓国政府内では破棄論が強まっていた。北朝鮮がミサイル発射を繰り返すなか、日米韓の安全保障協力に影響を与える恐れがある。
NSCの金有根(キム・ユグン)事務処長が記者会見で「GSOMIAの終了を決めた。外交ルートを通じて日本政府に通報する」と述べた。
GSOMIAは日韓の防衛当局が防衛秘密の交換を円滑にするための協定。2016年11月に署名し、1年ごとに更新してきた。輸出管理の厳格化を巡って日韓の対立が深まるなか、韓国政府は撤回や追加措置の阻止を迫るカードとして破棄の可能性を示唆してきた。破棄の場合は、24日までに相手国に通告する必要がある。
NSC会合に先立ち、韓国大統領府の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は米国のビーガン北朝鮮担当特別代表と会談し、GSOMIAの扱いを含む日米韓の安保協力を巡って協議した。米国はかねて日本との安保協力を強化するよう求めており、ビーガン氏もこの場で継続を望む立場を伝えていた可能性が高い。
韓国政府内では7月以降、輸出管理を厳しくする日本に譲歩を迫るカードとして、GSOMIAの破棄論が強まった。国防省などには継続論が強く、鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は21日に同協定について「戦略的価値は十分にある」と指摘していた。
一方、南北融和を優先する韓国の革新系勢力には「日米韓の安保協力は南北分断を固定化する」という主張も存在していた。21日には韓国大統領府の金商祚(キム・サンジョ)政策室長が「韓国を信頼できないとする国と敏感な軍事情報を交換することが正しいのか」と発言した。日本の輸出管理措置に反対する革新系の市民団体が催す日本批判集会では「GSOMIA破棄」のプラカードを掲げる人もいた。
北朝鮮もかねて宣伝媒体を使って、韓国に破棄を促していた。朝鮮中央通信が22日報じた北朝鮮外務省報道官の談話は、軍事的緊張を高めているとして韓国を批判し「軍事的威嚇を伴った対話には興味がない」などと主張していた。
北朝鮮は5月以降、飛行軌道が変則的で迎撃が難しい新型の短距離弾道ミサイルなど飛翔(ひしょう)体を8回にわたり発射した。ロシア製の模倣とみられるミサイルは、変則的な軌道で飛行するため捕捉や迎撃が難しい。分析には米軍や日本のイージス艦などが収集する情報が欠かせず、韓国にとっても自国防衛に影響が出るのは明らかだ。
日本政府は韓国側に更新を判断するよう求めていた。菅義偉官房長官は22日の記者会見で「日韓関係が非常に厳しい状況にあるが、連携すべき課題については連携することが重要だ」と指摘。岩屋毅防衛相も記者会見で「延長に期待している。日米韓の連携にも資する」と語った。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48873830S9A820C1MM8000/
2019-08-22 09:24:00Z
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