<ほとんど衝動的に外国の軍司令官を殺害し、差し迫った攻撃を阻止するための自衛策という当初の説明が、翌日にはやられたからやり返したという説明にすり替わる軽さは、敵に塩を送るだけだ>
米軍は1月3日、イラン革命防衛隊の精鋭「クッズ部隊」のカセニ・スレイマニ司令官をドローン攻撃で殺害した。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)とAP通信の週末の報道によればこの攻撃は、2019年末にイランの指示とみられるイラク駐留米軍への攻撃が増加したことを受けて、政府高官がドナルド・トランプ大統領に提示した「複数の対応策」のひとつだった。
NYTによれば、「国防総省関係者はこういう場合、まず絶対に選ばれない端な提案も選択肢に入れて、自分たちが推す対応策が選ばれやすいようにすることがある」。スレイマニ殺害案もそうしたあり得ない策のひとつだったが、トランプはそれを選んだ。国防総省は驚いたという。
だがトランプはこの3年間、アメリカの従来の軍事・外交政策を何度も(気まぐれで)覆してきた。国防総省はなぜ、トランプが最も極端な策を選ぶことを予想できなかったのだろうか。イランと和解して中東における終わりのない戦争を回避したいと言っていたトランプのウソを真に受けたのだろうか。今回の事態は、諸外国の指導者の言動を分析することも職務の一部である国防総省の担当者が、自国の指導者のことさえ理解できていないことを示唆している。
スレイマニを殺害したことについての説明も、トランプ政権の当初の説明はウソだったようだ。トランプは、この攻撃は、スレイマニ率いる特殊部隊の攻撃を阻止するために必要な「自衛策」だったと説明した。トランプが3日に出した声明はこうだ。「スレイマニはアメリカの外交官や軍関係者に対して、差し迫った邪悪な攻撃を画策していたが、我々はその証拠を掴み、必要な行動をとった」
在イラク米大使館の攻撃に「激怒」
だがその後の報道によれば、差し迫った攻撃など存在しなかった。スレイマニ殺害は最初、「自衛」策としてではなく、一週間前の12月27日にイラクの米軍基地に対する攻撃でアメリカ人の請負業者1人が殺されことへの「報復」として提案された。この時トランプが選んだのは、イランが支援するイスラム教シーア派武装組織「カタイブ・ヒズボラ」の拠点をドローン攻撃するというより「穏やかな」選択肢だった。
NYTによれば、トランプがその後スレイマニ殺害という「極端な」策を選んだのは、12月31日に在イラク米大使館がイランの支援を受けた武装組織によって攻撃されたのをテレビで見て「激怒」したからだという。バラク・オバマ前政権時代にリビア東部のベンガジで起きた米領事館襲撃事件を彷彿とさせる映像が、アメリカを弱く見せ、大統領選にも響くのではないかと恐れたのだ。
<参考記事>軍事力は世界14位、報復を誓うイラン軍の本当の実力
<参考記事>トランプが52カ所攻撃するなら、イランは300カ所攻撃する
https://news.google.com/__i/rss/rd/articles/CBMiQWh0dHBzOi8vd3d3Lm5ld3N3ZWVramFwYW4uanAvc3Rvcmllcy93b3JsZC8yMDIwLzAxL3Bvc3QtOTIwNzYucGhw0gFFaHR0cHM6Ly93d3cubmV3c3dlZWtqYXBhbi5qcC9hbXAvc3Rvcmllcy93b3JsZC8yMDIwLzAxL3Bvc3QtOTIwNzYucGhw?oc=5
2020-01-07 11:45:00Z
52782143220522
Bagikan Berita Ini
0 Response to "イラン軍司令官を殺しておいて本当の理由を説明しようとしないトランプは反アメリカ的 - Newsweekjapan"
Post a Comment