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“首都封鎖”になったら 新型コロナウイルス - NHK NEWS WEB

“首都封鎖”になったら 新型コロナウイルス

東京都の小池知事が、記者会見で口にした「都市の封鎖」。知事は「事態の今後の推移によっては、都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるをえない状況が出てくる可能性がある」としたうえで、「何としても避けなければならない」と感染拡大防止への協力を呼びかけたのです。SNS上では、「首都封鎖」や「ロックダウン」のことばが一時、トレンド入り。仕事や生活への不安など、さまざまな反応が飛び交っています。もしも本当に“首都封鎖”になったら、どうなるのでしょうか。(ネットワーク報道部 河崎眞子 城山海人 大窪奈緒子 和田麻子/科学文化部 藤ノ木優)

ネット上では…

会見の直後。都市の封鎖について、ネット上では、「突然、発令されたら困る」、「東京のどの辺を封鎖するの?23区だけ?全部?」など、さっそく時期や範囲まで気にする声があがりました。

「さらに収入が減っちゃう」、「千葉県民は会社に行けない」、「会社に泊まることになる」など仕事への影響を心配する声も相次いでいます。

通院に困るのではないかという、深刻な投稿もありました。

話を聞いてみると、この不安を抱えているのは岐阜県内に住む30代の女性でした。皮膚や内臓が硬くなる難病「全身性強皮症」を患っていて、月に1度、薬の処方や副作用の検査などのため、新幹線で都内の大学病院に何年も通っているといいます。

女性
「私の病気に対応してもらえる病院はあまりないので、都内まで通っています。今の薬の処方は一般のクリニックでは難しいですし、副作用の検査もあるのでまとめて数か月分の薬をもらうこともできない。薬が切れないか不安です」。

次回の通院の予約は4月上旬。いつものように1か月分の薬を受け取る予定です。

女性
「もし東京の封鎖が決まったらすぐ医師に相談しようと思っています」

ロックダウンでどうなる? 海外では

実際にロックダウンが起きてしまうと、街はどうなるのでしょうか。「封鎖」の程度は海外でもさまざまですが、小池知事の発言を受けて、フランス・パリ在住の作家、辻仁成さんが、24日、自身の主宰するウェブマガジンに日記を掲載しました。

タイトルは「もしも東京がロックダウン(外出制限)されたなら」。冒頭で、辻さんはこう述べています。

辻仁成さん
「仮に、東京都がロックダウンを発令した場合、どういうことが考えられるかを、現在、ここパリで封鎖を経験中のぼくがまとめてみた。まさか、とは思わないで、心の準備のために読んでもらいたい」

辻さんは、現在のフランスでの外出の可否について、「外出は今日現在、今のところ、誰であろうと可能なのだ」としています。

外出の条件は

ただ、一定の条件があるといいます。

辻仁成さん
「健康のための運動、食材の買い出しは認められているが、外出する前に政府が用意した用紙をダウンロードし、日付やサインなどを記入、携帯しないとならない。パリでは運動や買い物は500メートル以内で一時間以内と限られている。感染の酷い地域では22時から朝の5時までは完全封鎖となっている」

街の様子は

また、現在のパリの街の様子や、仕事、買い物事情について説明しています。

辻仁成さん
「ロックダウンになると営業出来る店は、スーパー、薬局、食材を売る店(八百屋、魚屋、肉屋、パン屋)、タバコ屋、病院などに限られ、あとは閉鎖。市場(マルシェ)も明日から閉鎖。普通の会社は基本テレワークになる。Amazonも生活必需品を優先し、贅沢品は配達をやめている」

辻仁成さん
「警察官も最初は温厚だったが、今は(マスクも不足してつけられないせいもあり)殺気立っている。罰金も初日は38ユーロ(約5千円)だったが、人々が出歩くので、最大1500ユーロ(18万円)に値上がり、しかも、それを4回破った者には50万円と6か月間の投獄となる」

街が緊張感を増す一方、封鎖の効果も感じられるという話も。

辻仁成さん
「ロックダウンになって、マスクや消毒ジェルは逆にあまり使わなくなった。近所に買い物に行くだけだし、そこの人たちが完全防備なので、石鹸で手を洗うことなどに努めることで、市中感染の脅威から解放された。食料に関しては、買いだめをしなくても食材がスーパーから消えるということはなかった。(一時期、パスタや油などが消えたが、どこの店舗もすぐに回復をした)」

もし東京で発令されたら

ロックダウンが及ぼす影響について、辻さんは心の問題を指摘しています。

辻仁成さん
「問題は人々の精神面である。とくに子供たちのことがぼくは心配だ/家にいろと言われても春の麗らかなこの時期、遊びたい盛りの青年たちには相当に難しいことでもある。もしも、東京都がロックダウンを発令したら、どうなるだろう」

そして次のように日記を締めくくっています。

辻仁成さん
「東京都でロックダウンが始まる場合、パリとは規模が違うので、人々の動揺も人口に比例して大きいかもしれない。心の備えだけはしておいてほしい。どの程度の状態になるのか予測が付き難いが、最初は緩やかで、じわじわと厳しくなっていくのじゃないか、と思う/息子と二人暮らしなので、ぼくも人一倍健康には気を付けている。パリは今は戦時下である。贅沢をせず、この生活に慣れることが大事だと二人で励まし合っている。一緒に運動をやり、一緒にご飯を作り、笑顔を忘れずに生きている。逆を言えば、生きていることが有難いと思える日々でもある」

人と人がつながって

厳しい状況のパリから、もう1人、話を聞かせてくれた人がいました。パリ在住で、フリーランスの仕事をしている荒木麻美さん。

外出制限が始まって荒木さんが最も実感しているのは、人と人とのつながりの大切さです。荒木さんの住むアパートには高齢の人なども住んでいるため、住民どうしが声を掛け合って買い物に行き、必要な人に届けているといいます。

外出制限が始まってすぐに、アパート1階の共有部分に「お年寄りや健康に問題のある人は、遠慮なく連絡をしてください。買い物とかお手伝いします」という貼り紙が貼られました。すると、何人もが続いて「私もやりますよ」という貼り紙を足していっているそうです。

最近では、自宅にプリンターがない人のために「移動証明書を印刷しますよ」という貼り紙も。

荒木さんは「いちばん準備しておくべきものは何よりも『平常心』。パニックにならない心だと思います」と話していました。

一人一人でロックダウンを食い止める

新型コロナウイルスの影響で、世界各地で起きている都市の封鎖。東京でも、本当に起きるのかどうかはわかりません。現状をどう見るか、何が求められるのか、感染症対策に詳しい、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授に聞きました。

まず、小池都知事の発言をどう受け止めたか。

賀来特任教授
「東京などでは、どこから感染したか分からず、感染のつながりがたどれない患者が徐々に増えています。アメリカやヨーロッパの感染の広がり方を見ると楽観視はできず、今後、特に都市部では感染者が爆発的に増加するおそれは十分あります。強い表現で危機感を多くの人々と共有したかったのではないでしょうか」

そのうえでこう指摘しました。

賀来特任教授
「大規模なイベントが繰り返し開かれるようになればリスクが確実に上がっていくことを忘れてはなりません。国内でも感染が一気に広がれば都市の封鎖を真剣に考えざるを得なくなる可能性は十分あります。買い物や散歩など、すべての外出を自粛する必要はありませんが、大勢の人が集まるイベントは自粛し、手洗いやマスクの着用、室内の換気を徹底するなど、これまで以上に感染防止対策に努める必要があります」

“首都封鎖”を食い止めるには、改めて一人一人が対策を徹底することが必要だと、強調していました。

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2020-03-24 12:37:17Z
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