米国では検査数全体の約5パーセントが陽性だが、米PGAツアーは2600人以上の検査が実施され、陽性率はわずか0.26パーセントと、平均を大きく下回っている。
ワトニーの感染が確認されたのはRBCヘリテージの2日目。体調不良からコース入りせず検査に向かったのだが、結果が陽性だったニュースが流れると、練習場から選手の姿が消え、初日に同組でラウンドしたボーン・テーラーとルーク・リストは「ドキドキして、プレーに集中できなかった」と、動揺を話した。
翌週のトラベラーズ選手権でチャンプの陽性が判明すると、コミッショナーのジェイ・モナハン氏が急遽(きゅうきょ)現地入りし、
「ルールが守られていない。もっと真剣に取り組むように」
と通達したことから、選手やキャディたちの行動に、徐々に変化が見られている。キャディはピンやバンカーレーキを触る際には配布されている除菌シートを使用、プレー中にも手の除菌をする姿が目につくようになった。まだキャディからクラブを受け取る選手は多いが、自身でバッグから出し入れする努力はしている。
「トーナメントの開催にはたくさんの人々の雇用が懸かっている。ルールはその都度改めながら、よりよい方法を取っていく」(モナハン氏)
陽性となった場合には、大会を棄権し10日間の自主隔離、ツアーは回復までフルサポートすることになっている。ルールは少しずつ変更され、これまで会場で検査結果を待つ間も屋外での練習は許可されていたが、陰性とされなければコースに立ち入ることができなくなった。また少しでも疑わしければすぐ検査を実施。トラベラーズ選手権では3日目の朝にジェイソン・デイの検査を実施するためにスタート時間を遅らせる対応が取られた。
「ツアーを再開するに当たり感染者が出ることは想定内。これからも出るだろうし、だからといってツアーを中止するなんてばかげている。ルールをしっかり守ってこれからもツアーを続けることがわれわれの指命」(ローリー・マキロイ)
「試合に来る以上、かかったら仕方ないが、最大限に気をつける」(松山英樹)
今後も試合を重ねれば、ルールはブラッシュアップされていくのだろう。
文・武川玲子
※週刊パーゴルフ(2020年7月21日号)掲載
大阪府出身。米国・ロサンゼルスを拠点に、米PGA、LPGAツアーを精力的に取材している。 2011年、LPGAグローバルメディア賞を受賞。世界ゴルフ殿堂の選考委員も務める。
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