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少しでもマシな明日のために行き過ぎた市場経済そのものから考え直す | Social Good Opinion | 岸本華果 - 毎日新聞

 今年の夏、日本各地で発生した記録的豪雨、河川の氾濫、土砂崩れ。私は怖かった。こんなの誰がどう見ても異常だ。

 去年、台風19号で被災した長野県の千曲川流域に、ボランティアに行った。建物の壁、道路、りんごの木、目に入るものが全て茶色だった。りんご畑や民家の庭先にたまった泥の片付けを手伝ったが、水を含んだ泥は重くてすぐにバテた。もとの生活に戻るまでにかかる時間や労力を想像すると途方もなかった。こうしたことが日本全国で起こっていると想像したら、気がめいってしまった。

 災害とまではいかなくても、長雨や日照不足もひどかった。そしてやっと雨がやんだかと思えば、今度は高温と乾燥。メディアやSNSには、例年通りに作物が育たず苦しい思いをする農家さんの声があふれていた<暮らし脅かす温暖化 熱中症、災害、不作・不漁…自治体アンケートでみる地域の実情>。

 毎日気候変動のことを考えずにはいられなかった。もうどうしようもない領域に足を踏み入れてしまった気がしていた。パリ協定の目標を達成して、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えられたとしても、今より良くなることはない。

 そして温室効果ガスの実質排出量ゼロを保ち続けないとその世界すらも維持されない。私がこれから生きる世界は、維持か悪化のどちらかしかない、明日が今日よりも良くなることがない世界だ。今年のような豪雨や高温などはもうあたりまえになる。その事実が受け入れ難くて、絶望的な気持ちになっていた。

 私は気候変動を本当に解決するなら、全てが循環する植物・動物・微生物の世界に人間がヒトとして存在していた、農耕社会くらいまで時代をさかのぼらないと厳しいと思っている。自然と人間が土地と労働力として商品化されて成立した市場経済では、生産は生産手段の消費、消費は労働力の生産を意味し、それらが永遠に繰り返されるかに見える。しかし実際は、自然も人間もだんだんすり減り、温室効果ガスを含む廃棄物の蓄積が進む。ものをつくっているようで、同時になにかを壊している。生活は便利になったかもしれないが、気候変動をはじめとする環境問題や、心身ともに病んだ末の過労や自殺といった社会問題はその裏返しだ。自然や立場の弱い人、将来世代など、奪えるところから奪えるだけ奪う市場経済が行き過ぎた先にあるのは、自然と人間の崩壊でしかない。

 崩壊が分かっていながらも今まで進んできたのは、時間的空間的なズレゆえに自分自身に直接の被害がないからだ。しかし、気候変動は、気づいていないだけで、あるいは見なかったことにしているだけで、もうすでに多くの人の生活を脅かしつつある。このまま目を背けていても崩壊を免れないならば、市場経済そのものから考え直さなくてはいけない。経済思想家の斎藤さんも「危機を乗り越える唯一の選択肢は、資本主義そのものに挑む新しい脱成長だ」と主張する<気候危機招いた資本主義の矛盾撃つ 「新しい脱成長」斎藤幸平さんが描く未来>。農耕社会に戻るのは非現実的かもしれないが、行き過ぎた市場経済からもう少しバランスをとることを志向し、その道を具体的に模索していく必要がある。

 絶望を理由に見ないフリをしかけていた私をこう思わせたのは、災害や毎年の気候の変化に苦しみつつも必死に適応しようとしている農家さんと、その声を消費者に届けようとしているポケットマルシェのみなさんだった。

 ポケットマルシェは、生産者と直接やりとりをしながら食べ物が買えるプラットフォームだが、食べ物を売買する場というよりは生産者と消費者の関係性が育まれる場と言える。安く、効率よく、が求められる市場経済では排除されてきた個性のある食べ物を通して、生産者と消費者、自然と人間がつながる。「いただきます」や「ありがとう」を重ねるうちに、何かあったら心配するような関係になる。消費者が、思い通りにならない自然とひたすらに向き合う生産者の声に触れ、自分のことのように痛みや喜びを感じるようになれば、気候変動と向き合い、行動するための一歩になる。ポケットマルシェは、市場経済の負の側面に気づき、捨象されてきた大切なものを取り戻そうとする動きを大きなうねりにしたその先に、豊かさやしあわせを感じられる世界を描いている。

 早ければ2030年には「+1.5℃」の世界に到達してしまうと言われている。もう残された時間は長くはないが、私もこのうねりを大きくする一員となって、少しでもマシな明日のためにやれることをやる。

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2 Responses to "少しでもマシな明日のために行き過ぎた市場経済そのものから考え直す | Social Good Opinion | 岸本華果 - 毎日新聞"

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