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コロナ禍の消費落ち込みを少しでも緩和できるのは「60~74歳」かもしれない【怒れるガバナンス】 - 時事通信ニュース

記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年7月31日、東京都庁【時事通信社】

記者会見する東京都の小池百合子知事=2020年7月31日、東京都庁【時事通信社】

 ◆作家・江上 剛◆

 新型コロナウイルス感染症の勢いが、まだまだ収まらない。

 一方で政府は、夏の観光シーズンを前に、県をまたぐ移動を復活させようと、「Go To キャンペーン」なるものを立ち上げた。

 事務委託に特定企業との癒着があるのではないか、との批判を招いているが、海外からの観光客が全く見込めない中では、全国の観光地は、客が来る見込みのある政策なら、大歓迎というところだろう。

 感染者が多く出ているのは「夜の街」だ。ホストクラブなどで、クラスター(感染者集団)が発生しており、密な接待を主目的とする店は、完全な悪者扱いだ。

 現状は、無症状の罹患(りかん)者が多く、検査してみたら陽性だったという。無症状でも、感染力はあるというので、放置できないというのは理解できるが、経済の観点からすると、「もう勘弁してほしい」という悲鳴が聞こえてくる。

 医療体制さえ、しっかりしていれば(これがどの程度であればいいのか悩ましいが)、コロナを恐れてばかりいないで、どんどん働き、遊んでもらいたい、というのが経済界の本音ではないだろうか。

 ◆人口の2割「60~74歳」

 今回は、私の生活から、コロナによる消費生活の未来について、考えてみたい。未来というと、聞こえがいいが、どのように生活が変化したか、ということだ。

 データを駆使したいところだが、今回のようなコロナパンデミックは、誰もが初体験なので、適当なものがない。

 私同様、各自が語る個人の消費生活の変化を、いずれ専門家が統計的な処理を行い、詳細な未来図を描いてくれることを期待したい。

 わが家の家族構成を申し上げると、妻と2人暮らし。自宅は持ち家で、車も1台所有している。子どもは独立し、孫もいるが、離れて暮らしている。

 私は66歳、妻は62歳だ。共に何とか、健康を維持している。

 総務省のデータ(2019年12月)によると、わが国の人口は男性6140.1万人、女性6474.3万人。

 男性のうち、60歳から74歳までが1200.9万人で、約19.6%。同じく女性では1287.4万人、約19.9%。ともに約20%を占めている。

 どうして60歳から74歳に区切ったかというと、消費という観点からすると、それ以上の年齢では、活動的に動くのは難しいのではないか、との勝手な思い込みだ。

 もちろん、80歳、90歳になっても、元気で出歩いている人はいる。これは、あくまで、私個人がせめて74歳ぐらいまでは消費生活を楽しみたい、と思っているからだと、お許し願いたい。

 私ども夫婦のような、60歳以上74歳までの男女が、全人口の約20%を占めている。これは、かなり大きな割合と言える。

 ◆ゆとりある60歳以上

 この世代の金銭的なゆとりはどうなのだろうか。

 老後資金2000万円問題が大きな騒ぎになったが、19年6月発表の内閣府「高齢者の経済・生活環境に関する調査」(16年の60歳以上の男女を調査)によると、かなりゆとりがあることが分かる。家計について「全く心配ない」「それほど心配ない」が64.6%である。

 実際の貯蓄額からも、ゆとりが見えてくる。

 総務省家計調査(17年、2人以上の世帯)によると、世帯全体の貯蓄額の中央値が1074万円であるのに対して、世帯主60歳以上では1639万円である。加えて世帯主65歳以上では4000万円以上の貯蓄がある世帯が17.6%だ。

 20歳代、30歳代の子育て世代が、親の世代の援助を頼みにするのもうなずける。

 わが家にゆとりがあるかは別にして、これらのデータから、わが国の人口の約20%を占める60歳以上は、それなりに貯蓄があり、生活にゆとりがある世帯が多いことがうかがえる。

 私ども夫婦を見て分かるのだが、この60歳以上の世帯の活動が完全に封じ込められたのが、今回のコロナパンデミックだ。

 マスコミで、高齢者は罹患すると重症化する、と言われたからだ。この世代に属する志村けんさん等、有名人が亡くなった影響も大きい。そのため、私たち夫婦の消費生活も完全に変化した。

 「密」に対して「疎」ということになるだろうか。かなりの頻度であった夜の会食、海外を含む旅行、演奏会、演劇、映画、落語なども無くなった。自粛解除になっても、行かない。

 とにかく、若い人がいるところは避けよう、ということになってしまった。完全に「疎」だ。

 ◆キーワードは「家」

 私たち夫婦だけではなく、多くの60歳以上の世帯で同様に、消費は「疎」になったのではないだろうか。消費生活の未来という意味では、「疎」は暗い未来予測となる。

 しかし、ゆとりある60歳以上の世帯に消費を活発化してもらうことが、コロナパンデミック下での経済復活には、重要な視点となる。そのためには、「疎」の生活に対応した消費活性化対策を講じるのが必要だと考える。

 「疎」の消費生活のキーワードは「家」だ。

 例えば、県をまたぐ旅行(海外はもちろんのこと)はしなくなったが、散歩は夫婦で頻繁にするようになった。

 こんなことは、以前はあまりなかった。周囲を見ると、夫婦で散歩する姿が、以前より増えている。

 わが家では、散歩するための歩きやすい靴やパンツなどの服装、これらをインターネットで購入した。スマートフォンには、万歩計や植物電子図鑑のアプリをダウンロードした。

 特に植物電子図鑑のアプリは重宝している。散歩途上で見かけた草花の写真を撮ると、数秒で名前や育て方などの情報を提供してくれる。草花の名前を覚えるという楽しみが増えたため、散歩が苦にならない。

 わが家にはペットはいないが、散歩には犬などのペットがいれば、もっと楽しいだろう。このように、旅行からは「疎」になったが、散歩など「家」の近所を中心とした消費が活発化するだろう。

 ◆値上げしかないのかも

 レストランに行かなくなった分、「家」での食事が増えた。外では酔っぱらうほど飲んでいたが、家ではそういうわけにはいかない。

 従来の家飲みは、安いワインに発泡酒という家庭が多かったのではないかと推測されるが、外飲みの頻度が減少した分、少し値の張るワインや日本酒の需要が増えると思われる。

 今までのように外飲み需要の業務用で利益を上げていた酒造メーカーは、売り上げが増えなくて苦戦しているようだが、「家」での消費を前提とした利益率の高い酒を60歳以上にアピールするべきだろう。

 それと同時に、家にこもりがちになる男性は、妻から嫌がられやすいので、「男の料理」に関する食材、調理器具、料理本、教室などの消費が喚起されることだろう。

 料理など、したことがない高齢男性にも、手軽に作れる半調理的な食材、メニュー付き食材などがいいかもしれない。

 私たち夫婦は、落語が好きで、寄席や独演会には頻繁に通っていた。ところが、現在はほぼ全てがキャンセルだ。残念でたまらないが、オンライン寄席では、どうも満足できない。落語家もそうではないだろうか。

 コロナパンデミックで最も大きな影響を受けているのは、落語家はもちろん、演劇、演奏に関わる人たちだろう。

 劇場は「密」になるため、開演できても、半分以下の観客しか入場できない。これでは演者たちの生活が成り立たない。この「疎」に対抗するには値上げしかないのかもしれない。

 ◆いろいろ工夫が必要

 値上げすると客数が一層、減少する可能性が高いが、60歳以上のゆとりがある人たちが、どうしても劇場に足を運びたくなる演目を選ぶとか、都心の大きな劇場ではなく、「家」の近くで演劇などを楽しめるとか、別の方法がないのか、模索できないものか。

 近所には図書館、体育館など公的な建物も多い。電車に乗って都心の劇場に行くという感染リスクを避けるためには、「家」の近くに演劇の場があるといい。

 欧州を旅すると、小さな村にもオペラハウスがある。そんなイメージだ。大劇場、大観客という従来の商業演劇スタイルから、「家」スタイルへの変化だ。

 60歳以上の人にとって、スポーツクラブがクラスター発生の元凶となったのは悲劇だ。多くの高齢者が、健康のためにスポーツクラブに通っている。徐々に再開しているようだが、狭い部屋でのダンスやエアロビ、サウナなどは禁止というところが多いと聞く。

 すっかり、スポーツクラブから「疎」になってしまえば、60歳以上の高齢者の健康問題にもなりかねない。ここでも、「家」という観点から、オンラインでストレッチなどを家で行えるようにするとか、インストラクターの「家」への派遣などが必要になるだろう。

 またスポーツクラブを「家」のように使ってもらうために、人数や年齢の制限など、60歳以上の人に安心して利用してもらえる工夫が必要だろう。

 ◆少量で高利益率

 コロナパンデミックは、働き盛りの人たちの収入減少や失業などをもたらしそうな気配が濃厚となっている。今後、詳しいデータが出されるだろうが、今から恐ろしい。こうなると、消費はぐっと冷え込む。

 そこで期待されるのは、60歳以上のゆとりある世帯だ。この層が全世帯の約20%を占めている現状を考えれば、コロナパンデミックにおける消費のけん引車になってもらいたいものだ。

 この層は、今や、コロナパンデミックのせいで、多くの関係性が「疎」になりつつあるが、「家」というキーワードで、消費の活発化の可能性がある。

 従来のように大量生産、大量消費ではない、質を重視した、少量でも利益率の高い消費材やコト消費を、この世帯向けにアピールする時ではないだろうか。

 (時事通信社「金融財政ビジネス」2020年7月20日号の記事を一部加筆・修正しました)

 【筆者紹介】

 江上 剛(えがみ・ごう) 早大政経学部卒、1977年旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。総会屋事件の際、広報部次長として混乱収拾に尽力。その後「非情銀行」で作家デビュー。近作に「人生に七味あり」(徳間書店)など。兵庫県出身。

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