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<くらしの中から考える 特別編>新聞で育む読む力 三つの型で書く力 - 東京新聞

 今年一月から毎月第一金曜日に掲載している親子向けのコーナー「くらしの中から考える」。お小遣い、昆虫採集など生活の身近な事柄をテーマに問いを投げ掛け、寄せられた意見を最終週の金曜紙面で紹介している。特別編の今回は、自分の意見を作文にまとめるときのポイントを専門家に取材。さらに授業で記事を使っている学校を訪ねた。十五日から新聞週間。(細川暁子、熊崎未奈)

◆作文のまとめ方

 思いや意見を文章にするにはどうしたらいいか。名進研小(名古屋市守山区)の国語科教諭・岩下修さんは、三つの型を提案する。日記のように出来事を順に書く「時系列型」、会話に重きを置いて小説のように書く「物語風型」、そして、一つの観点に絞って書く「観点型」だ。

 長年、小学校で作文を指導する岩下さんが、苦手意識がある子どもに勧めるのは「観点型」。コロナ禍で中止や延期が続く状況を受け、九月の「くらしの中から−」で取り上げた「修学旅行」をテーマに実践すると−。想定は主に小学生で四段落構成、四百字程度だ=図。

 ポイントの一つは「楽しかったこと」「意外だったこと」など一つの観点に絞って書く点。「『感想や意見を書いて』ではなく、具体的に観点を絞ると書ける子は多い」という。

 もう一つは、観点を決めたら具体的な体験や出来事を二つ書くこと。「すばらしかったこと」で書くなら、そう感じた場所を具体的に二カ所挙げ、そこでの体験や学びをつづるといい。「二つのものを比べたり、共通点を探したりすると思考が深まる」と狙いを話す。

 最後の段落では、二つの場所や体験を通じて、感じたり気付いたりした共通点を書く。「家族と行きたいと思った」「静かな雰囲気がすてきだった」「修学旅行はあった方がいい」など簡単なことでOK。作文全体のまとめになる。

 一方で「書き慣れていない子に、いきなり意見文は難しい」と岩下さん。小学校低学年や作文が苦手な子には「好きな○○」「私の宝物」など身近なものをテーマに設定。具体的なものを二つ示して書くよう勧めるとハードルは下がる。その上で「型を活用すれば書く力は伸びる」と指摘。書くことは自分や身の回りを見つめ直す機会になり、続けるうちに自身の意見も形作られていく。

 岩下さんによると、小学校の国語の授業は約三割を作文が占める。本年度の小学校を手始めに、中学校で二〇二一年度、高校で二二年度から実施される新学習指導要領は、主体的な学びに比重を置く。大学入試や就職試験で小論文が重視されつつある中、岩下さんは「八歳ごろまでに身に付けた作文力は一生役立つ。まずは型を活用し、書く力を伸ばしてほしい」と話す。

岩下修さん

岩下修さん

◆授業で記事を活用

 九月中旬、愛知県半田市の横川小六年生の教室。「どんな人を大人だと思いますか?」。担任の黒田有貴さん(36)が尋ねると、「成人した人」「社会人」など次々に声が上がった。

 題材になったのは三月に掲載された「くらしの中から-」の「いつから大人?」の記事。二〇二二年に成人年齢が二十歳から十八歳に引き下げられることを取り上げ、法律では何歳から何ができると定めているかを紹介しながら、自分が思う大人の基準を問い掛けた。

3月掲載の「いつから大人?」(一部)

3月掲載の「いつから大人?」(一部)

 黒田さんは記事のコピーを配布。子どもたちはそれを読んだ上で、記事を基に黒田さんが作ったワークシートの「辞書は大人の意味をどう書いているか?」などの問いを埋めて考えをまとめ、「学び合いが大事」と他の子の意見も聞いた。

 「大人は十五歳から」と書いたのは井上知奈さん(12)。「アルバイトができて自分で生活できるようになる」というのが理由。話し合いは「大人に必要な力とは」にも及び、久米帝駕(たいが)君(12)は「社会になじめる力」と回答。「社会に出ても困らない力」「体の健康」などの声も出た。こうした議論は、意見を作文にまとめる土台になるという。

 同校の六年生が「くらしの中から-」を使って授業をしたのは、七月に続き二回目。竹内陸君(11)は「新聞を使った授業は、ニュースを題材に友達と話し合えるから好き」と話す。前回は、四月掲載の「ネット利用のルール」がテーマの記事を使い、体験談や守っているルールについて、約三百字で作文を書いた。

「いつから大人?」を読み、他の子と意見交換しながら考えをまとめる子どもたち=愛知県半田市の横川小で

「いつから大人?」を読み、他の子と意見交換しながら考えをまとめる子どもたち=愛知県半田市の横川小で

 人を倒すゲームを毎日何時間もやっていたら、ゲーム機に向かって「やれ、ぶっ倒せ」というのが癖になっていた-。正直に書いたのは、守屋陽斗君(12)だ。親に注意され、自分でも「ゲーム依存かもしれない」と思ったことから「一日一時間半以内」とルールを作った経験を書いた。「作文で宣言し、絶対ルールを守ろうと思うようになった」。三浦梨子さん(12)は「知らない人と知り合うことができるため危険にまきこまれるかも。利用には『午後九時まで』などのルールが必要」とまとめた。

 同校校長の小嶌正嗣さん(52)は「新聞記事は会話を生み出す。どんな記事に興味を示すかを知り、感想を言い合えば距離も近づく」と話す。小嶌さんは二年前まで、市教育委員会で不登校の小中学生の支援に携わっていた。子どもの前に新聞を広げ、興味のある記事について思ったことを話してもらい、コミュニケーションを取ったという。

 小嶌さんは朝会で新聞記事を紹介するなど、NIE(教育に新聞を)に積極的に取り組んでいる。「活字離れが深刻」という危機感からだ。読書の時間も、文字を読むのでなく、写真や絵を眺めている子が多いと感じる。「授業に新聞を取り入れることで、読む力も書く力も養いたい」

     ◇

 同校以外にも「くらしの中から-」を取り入れ、作文を送ってくれる学校は、小学校から高校まで少しずつ増えている。今月二日に掲載したテーマは「学校の制服」で、締め切りは二十六日。応募はこちらから。

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